法律と手続き

遺言書を預ける場所はどこが安心?5つの選択肢と費用を専門家が比較解説

遺言書を預ける場所はどこが安心?

ご自身で書かれた大切な遺言書、どこへ預ければ安心かお悩みではありませんか?

この記事では5つの選択肢を比較し、ご自身に最適な遺言書を預ける場所を見つけるお手伝いをします。残されるご家族のために、最善の準備を一緒に考えていきましょう。

【最初にチェック!】どの保管方法を選べばよいか、一目でわかるようにまとめました。ご自身の状況に合わせて、最適な選択肢を見つけるための参考にしてください。

保管方法こんな方におすすめ
法務局費用を抑えつつ、紛失や改ざんのリスクを確実になくしたい方
公証役場費用はかかっても、内容の法的な有効性まで保証してほしい方
自宅保管紛失や未発見など強いリスクがあるため推奨しません

遺言書を預ける場所で悩む方へ|最適な選択肢を一緒に見つけましょう

遺言書を預ける場所はどこが安心?

この記事で分かること

  • 主な遺言書の保管場所5つのメリット・デメリット
  • ご自身に合った保管場所を選ぶための3つのポイント
  • 各方法にかかる費用や手続きの概要
  • 遺言書保管に関するよくある疑問とその答え

なぜ今、遺言書の「保管場所」がこれほど重要なのでしょうか?

完璧な内容の遺言書を作成しても、その存在が相続人に知られなかったり、万が一にも紛失や改ざんがされたりしては、故人の大切な想いを実現することはできません。そう、遺言書は作成することと同じくらい、「いかに安全・確実に保管し、相続の際に役立ててもらうか」が重要になるのです。

不適切な保管は、かえってご家族に余計な手間をかけさせたり、相続トラブルの火種になったりする可能性さえあります。残されるご家族が困らないようにするためにも、保管場所の選定は慎重に行う必要があるのです。

2024年の法改正で保管の重要性が増した理由

加えて、見過ごせないのが2024年4月1日から相続登記が義務化されたことです。この法改正は、遺言書を確実に保管する重要性をさらに高めました。なぜなら、不動産を相続した方は、原則3年以内に名義変更の登記を申請しなければならなくなったからです。

もし遺言書がすぐに見つからず遺産分割が滞ってしまうと、この期限に間に合わないかもしれません。その結果、ご家族が過料の対象になってしまうことも…。遺言書を公的な場所できちんと保管しておくことは、ご家族を法的な不利益から守るための、不可欠なリスク管理と言えるでしょう。

「万が一」に備えるための遺言書、こんなお悩みありませんか?

遺言書を預ける場所はどこが安心?

遺言書を書き終えて安堵したのも束の間、次はその保管方法という新たな課題が目の前に…。お困りの方もいらっしゃるのではないでしょうか。特に、多くの方が共通して抱えるお悩みを、ここで一つずつ確認していきましょう。

紛失や改ざんのリスク…自宅保管は本当に安全?

最も手軽な方法として「自宅保管」を思い浮かべるかもしれません。ですが、ご自宅での保管には、私たちが思う以上に多くのリスクが潜んでいます。

  • 紛失・汚損:保管場所を忘れる、遺品整理で誤って処分される、火災や災害で焼失する。
  • 未発見:厳重に隠しすぎて、誰にも見つけてもらえない。
  • 改ざん・隠匿:内容に不満を持つ相続人によって、書き換えられたり、隠されたりする。

長年大切にしていた貴金属が、ある日どこを探しても見当たらない…なんて経験はありませんか?大切な遺言書も、同じように危険と隣り合わせなのです。手軽さの裏にある危険性を、まずはしっかりと認識することが大切です。

家族に中身を見られず、確実に発見してもらうには

「遺言書があることは伝えておきたいけれど、亡くなる前に中身を見られるのは避けたい…」そう思われるのは、ごく自然なことです。プライバシーを守りつつ、いざという時には確実に発見してもらう。この一見矛盾した課題をどう解決すればよいのか、頭を悩ませる点は多いでしょう。

また、ご家族に預ける場合、誰に預けるのが最適かという問題もあります。遺言の内容によって有利になる方に預けるのが一案ですが、それがかえって他のご家族との関係をぎくしゃくさせてしまうのでは、という懸念も生まれます。

専門家への依頼は費用が高そうで躊躇してしまう

確実性を求めるなら弁護士や信託銀行などの専門家に頼む方法もありますが、やはり気になるのは費用面ですよね。年金での暮らしを考えると、「あまり高額な費用はかけられないけれど、安さだけで選んで失敗もしたくない」というのが正直なところではないでしょうか。

「専門家に頼むのは大げさな気がする」「一体いくらかかるのか見当もつかない」といった不安から、なかなか一歩を踏み出せないでいる方も少なくありません。費用と安心感のバランスをどう取るか、これが大きな課題となります。

後悔しない遺言書の保管場所、3つの選び方ポイント

遺言書を預ける場所はどこが安心?

さて、ここからは少し頭を整理して、後悔しないための判断基準を3つのポイントに絞って見ていきましょう。このポイントに沿って各方法を比較検討することで、きっとご自身に合った納得のいく答えが見つかるはずです。

ポイント1:安全性と確実性を最優先に考える

何よりもまず優先すべきは、遺言書が物理的に安全で、法的に確実に効力を発揮できるかという点です。紛失や改ざんといったリスクを限りなくゼロにできるか。そして、いざという時に内容が無効と判断されるおそれはないか。この2つの観点から、各保管方法の安全レベルを見極めていきましょう。

安全性の種類重視すべきこと
物理的な安全性紛失、焼失、改ざん、隠匿のリスクがないか
法的な確実性形式不備などで無効になるリスクがないか

ポイント2:許容できる費用と手間を明確にする

次に、ご自身が許容できる費用の上限と、手続きにかけられる手間を考えてみましょう。「とにかく費用を抑えたい」のか、「多少費用がかかっても、面倒な手続きは避けたい」のか。ご自身の価値観を明確にすると、選択肢は自然と絞られてきます。

例えば、趣味の盆栽にかける費用は惜しまないけれど、よくわからない手続きにはあまりお金をかけたくない、といったご自身の気持ちを整理してみるのがおすすめです。ご自身で役所に足を運ぶ手間は惜しまないか、専門家にすべてお任せしたいのか、考えてみましょう。

ポイント3:遺言書の種類(自筆か公正証書か)で選ぶ

実は、遺言書の保管方法は、その遺言書が「自筆証書遺言」か「公正証書遺言」かによって、選べる選択肢が大きく変わってきます。

  • 自筆証書遺言
    ご自身で手書きされた遺言書の場合、保管場所は「自宅」「法務局」「貸金庫」などが主な選択肢となります。
  • 公正証書遺言
    公証役場で作成した遺言書の場合、原本はそのまま公証役場で保管されるため、保管場所の悩みは基本的に解消されます。

すでにご自身で遺言書を作成されている場合は、自筆証言遺言の保管方法の中から検討していくことになりますね。

【徹底比較】遺言書の保管場所5選!メリット・デメリット

遺言書を預ける場所はどこが安心?

それでは、いよいよ具体的な5つの保管場所について、それぞれの良い点と注意すべき点を詳しく見ていきましょう。お仲間の間でも話題になった法務局のことから、一つずつじっくりと見比べてみてください。

比較項目①法務局②公証役場⑤自宅保管
安全性◎ 極めて高い◎ 極めて高い× 低い
法的確実性△ 中程度◎ 極めて高い× 低い
費用○ 3,900円× 高額◎ 無料
死後の検認◎ 不要◎ 不要× 必要

①法務局:低費用で安心、最も注目される公的制度

2020年に始まった「自筆証書遺言書保管制度」は、ご自身で書いた遺言書を法務局という国の機関に預かってもらえる、画期的な制度です。低コストと高い安全性を両立できるため、近年最も注目されています。より詳しくは法務省の公式サイトでも確認できます。

  • メリット
    • 手数料が一律3,900円と非常に安い。
    • 国の機関が保管するため、紛失・改ざん・隠匿のリスクがない。
    • 家庭裁判所での「検認」が不要になり、ご家族の負担が減る。
    • 指定した相続人へ死亡の事実が通知される制度もある。
  • デメリット
    • 遺言書の内容が法的に有効かは審査されない
    • 申請は必ずご本人が法務局に出向く必要がある。
    • 用紙のサイズや余白など、厳格な様式ルールを守る必要がある。

手続きは、事前に予約をして、完成した遺言書と必要書類を持参するだけ。役所の職員が形式をチェックしてくれるので、形式不備で無効になるリスクも減らせます。費用を抑えつつ自宅保管のリスクは避けたい、そうお考えの方にとって最も合理的な選択肢です。

②公証役場:法的確実性で選ぶならベストな選択肢

費用はかかりますが、安全性と法的確実性の両方で最も信頼性が高いのが、公証役場で「公正証書遺言」を作成し、そのまま保管してもらう方法です。公正証書遺言の詳細は、日本公証人連合会のウェブサイトでご覧になれます。

  • メリット
    • 法律の専門家である公証人が作成に関与するため、内容の不備で無効になる心配がない
    • 原本が公証役場で厳重に保管されるため、紛失・改ざんのリスクは皆無。
    • 家庭裁判所での検認が不要
    • 公証人に出張してもらい、自宅や病院で作成することも可能。
  • デメリット
    • 財産の額に応じて数万円〜数十万円の費用がかかる
    • 作成に証人2名の立ち会いが必要で、内容が知られる。

遺産の内容が複雑であったり、相続人間でトラブルが予想されたりする場合、あるいは費用をかけてでも完璧な形で想いを残したいと考える方にとっては、この方法が最善の選択と言えるでしょう。

③信託銀行・専門家:作成から執行まで一任できる安心感

信託銀行や弁護士、司法書士といった専門家に遺言書の作成から保管、そして亡くなった後の遺言執行までをトータルで依頼する方法もあります。すべてをお任せできる手厚いサポートが魅力です。

  • メリット
    • 専門的な知見に基づいた、最適な遺言内容のアドバイスがもらえる。
    • 保管から死後の煩雑な手続きまで、すべてを代行してもらえる。
    • 相続に関するあらゆる相談に対応してくれる。
  • デメリット
    • 費用が最も高額になる傾向がある(数十万円〜)。
    • サービス内容や費用は依頼先によって大きく異なる。

ご自身の財産管理や相続手続きで、ご家族に一切の手間をかけさせたくない、という強い思いがある場合には、検討の価値がある選択肢です。

④貸金庫:物理的な安全性は高いが注意点も

銀行の貸金庫に預ける方法は、火災や盗難といった物理的なリスクに対しては非常に安全です。しかし、手続き上の思わぬ落とし穴も存在します。

  • メリット
    • 耐火性・防犯性に優れた環境で、物理的に厳重に保管できる。
    • 金融機関によっては、遺言信託サービスとセットになっている場合もある。
  • デメリット
    • 亡くなった後、貸金庫を開けるための手続きが煩雑。相続人全員の同意や書類が必要になることが多い。
    • 家庭裁判所での検認は別途必要になる。
    • 貸金庫の存在自体が、ご家族に知られていない可能性がある。

遺言書をすぐにご家族が確認できないため、相続手続きが遅れてしまうリスクがあります。この方法を選ぶ場合は、貸金庫の存在と開け方を、信頼できるご家族に明確に伝えておくことが不可欠です。

⑤自宅保管:手軽だが最もリスクが高い選択肢

費用がかからず、いつでも書き直せる手軽さから選ばれがちですが、これまで見てきた通り、自宅での保管はあらゆるリスクを伴うため、原則として避けるべき方法です。

  • メリット
    • 費用が一切かからない。
    • 誰にも知られず、いつでも自由に作成・修正できる。
  • デメリット
    • 紛失、改ざん、隠匿、未発見のリスクが極めて高い
    • 死後、ご家族は家庭裁判所で必ず検認手続きを行う必要がある

2020年に法務局の保管制度が始まったことで、あえて自宅保管を選ぶ理由はほとんどなくなりました。ご家族への負担を第一に考えるのであれば、他のより安全な方法を検討することを強くお勧めします。

専門家が回答|遺言書保管に関する5つのよくある質問

いざ手続きを進めようとすると、細かい点が気になってきますよね。ここでは、多くの方が抱く疑問点にQ&A形式でお答えします。不安な点を解消し、次のステップに進むための参考にしてください。

法務局の保管制度にデメリットはありますか?

はい、いくつか注意すべき点があります。最大のデメリットは、法務局は遺言書の形式(日付や署名があるかなど)はチェックしますが、書かれている内容が法的に有効かどうかまでは審査しない点です。そのため、内容に不備があると、せっかく保管しても無効になってしまう可能性があります。

また、申請には必ずご本人が法務局に足を運ぶ必要があり、代理人や郵送での申請は認められていません。この2点を理解した上で利用することが重要です。

法務局に預ける際の具体的な費用はいくらですか?

遺言書1通あたりの申請手数料は、一律で3,900円です。これは申請時に一度支払うのみで、その後の保管料はかかりません。

その他にかかる可能性がある費用は以下の通りです。

  • 遺言書の閲覧請求:1回につき1,400円〜1,700円
  • 遺言書情報証明書の交付:1通につき1,400円
  • 申請の撤回:費用はかかりません

公正証書遺言に比べて、費用を大幅に抑えられるのが大きな魅力です。

保管した遺言書の内容を変更したくなったらどうすれば?

一度法務局に預けた遺言書の内容を、後から直接修正することはできません。もし内容を変更したい場合は、まず保管の申請を「撤回」する手続きを行い、遺言書の返還を受けます。

その後、新しい内容で遺言書を作成し直し、改めて保管の申請を行うという流れになります。その際には、再度3,900円の申請手数料が必要となりますのでご注意ください。遺言書はいつでも新しく書き直すことができ、日付が最も新しいものが有効とされます。

遺言書の書き方で参考にできる例文はありますか?

はい、法務省のホームページなどで、基本的な遺言書の書き方の様式や文例が公開されています。財産を誰か一人に相続させる場合や、特定の財産を特定の人に相続させる場合など、いくつかのパターンが紹介されているので、作成の際の参考になります。

ただし、これらはあくまで基本的な形式です。ご自身の状況が少しでも複雑な場合や、内容に少しでも不安がある場合は、後々のトラブルを避けるためにも、一度弁護士や司法書士などの専門家に相談し、内容を確認してもらうことをお勧めします。

もし、どの方法がご自身に合っているか判断に迷う場合や、遺言書の内容に不安がある場合は、一度専門家に相談してみてはいかがでしょうか。多くの事務所では無料相談も実施しており、話を聞いてもらうだけでも、きっと心が軽くなるはずです。

ご自身に最適な保管場所を見つけ、安心して未来に備えましょう

遺言書を預ける場所はどこが安心?

本記事の要点まとめ:3つの主要な保管方法を再確認

ここまで、様々な遺言書の保管方法について見てきました。最後に、主要な3つの方法のポイントを改めて確認しておきましょう。

  • 法務局
    費用を抑えたいが、自宅保管のリスクは避けたい方に最適。ただし内容の有効性は自己責任となる。
  • 公証役場
    費用はかかるが、内容の有効性まで含めて、最も確実で安心できる方法。
  • 自宅保管
    手軽だがリスクが非常に高く、ご家族に負担をかける可能性があるため非推奨。

まずは専門家への無料相談から始めてみるのも一手

ご自身の財産状況やご家族との関係性は、一人ひとり異なります。そのため、「誰にとってもこれが一番」という絶対的な正解はありません。もし判断に迷われたら、終活に詳しい司法書士や弁護士に相談してみるのが、最適な答えを見つける一番の近道です。

専門家は、ご自身の状況を客観的に分析し、法的な観点から最善のアドバイスをしてくれます。初回の相談は無料で行っているところも多いので、気軽に問い合わせてみてはいかがでしょうか。

残される家族のために、今できる一歩を踏み出そう

遺言書の保管場所を決めることは、ご自身の想いを確実に未来へ繋ぎ、何よりも残される大切なご家族を守るための、愛情のこもった行動です。私も父を亡くした経験から、事前の準備がいかに家族の助けになるかを痛感しています。

この記事が、ご自身の不安を少しでも和らげ、次の一歩を踏み出すきっかけになれば、これほど嬉しいことはありません。この記事をお読みいただいた方の終活が、穏やかで実りあるものになることを心から願っています。

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