遺産相続というと、莫大な財産を持つ一部の裕福な家庭だけの問題と思いがちですが、実はそうではありません。
普通の家庭でも、相続は誰にでも起こりうる身近な問題なのです。
この記事では、普通の家庭における遺産相続の基礎知識として、遺産の平均額や相続税、よくあるトラブルなどを具体的に解説していきます。遺産相続について漠然とした不安を抱えている方、相続の準備をどのように進めたら良いか悩んでいる方にとって、きっと役立つ情報となるでしょう。
この記事を読み進めることで、あなたも遺産相続の全体像を把握し、安心して準備を進めることができるはずです。
- 普通の家庭における遺産の平均額は約3,273万円、中央値は1,600万円。
- 遺産相続は、コミュニケーション不足や不公平感が原因でトラブルに発展することがある。
- 5,000万円を相続した際の相続税額は、相続人の数によって異なる。
- 遺言書の作成や家族信託の利用など、事前の準備が相続トラブルの回避に繋がる。
普通の家庭における遺産相続の基礎知識

普通の家庭における遺産の平均額は?
2020年にMUFG資産形成研究所が行った調査によると、親から子に相続される財産の平均額は 3,273万円 でした。中央値は1,600万円です。
この数字を見て、「意外と多いんだな」と感じた方もいるのではないでしょうか? しかし、これはあくまでも平均値です。中には数億円単位の遺産を相続する人もいれば、1,000万円以下の遺産を相続する人もいます。
より詳しく見てみると、相続額が 500万円~1,000万円未満の人が22.9%、1,000万円未満の人が61.5%、2,000万円未満の人が77% という結果が出ています。つまり、多くの家庭では、遺産総額は1,000万円~2,000万円の範囲に収まっている といえます。
重要なのは、平均値だけでなく、中央値や分布も考慮することです。中央値は、データを小さい順に並べたときに、ちょうど真ん中に来る値です。平均値は、極端に大きな値や小さな値に影響されやすいという特徴があります。そのため、遺産相続のようにデータにばらつきがある場合は、中央値の方がより実態に近い値と言えるでしょう。今回の場合、中央値が1,600万円ということは、半数以上の人が1,600万円以下の遺産を相続している ということになります。
平均的な親の遺産額は?
親の遺産額は、所有している財産の種類や価値によって大きく異なります。都市部の一等地に豪邸を所有している場合は、遺産総額も高額になるでしょう。逆に、地方都市に一般的な一戸建てを所有している場合は、遺産総額はそこまで高額にならない可能性があります。
一般的に、親の遺産の大部分を占めるのは 不動産と現金・預貯金 です。不動産は、自宅や土地などが該当します。現金・預貯金は、銀行口座や郵便貯金などが該当します。その他にも、株式や投資信託などの金融資産、自動車や貴金属などの動産も遺産に含まれます。
国税庁の「令和4年分における相続税の申告実績の概要」によると、相続財産の内訳は、土地が23.7%、家屋が5.3%、有価証券が17.0%、現金・預貯金が40.5%、その他が13.5%となっています。
遺産相続における中央値とは?
遺産相続の話で「中央値」という言葉を耳にすることがあります。「中央値」って一体何でしょうか? 簡単に言うと、データを小さい順に並べたときに、ちょうど真ん中に来る値 のことです。
例えば、5人の相続額が「500万円、700万円、1,500万円、2,000万円、3億円」だったとします。この場合、平均値は6,340万円になりますが、中央値は1,500万円になります。
平均値は、極端に大きな値や小さな値に影響されやすいという特徴があります。そのため、遺産相続のようにデータにばらつきがある場合は、中央値の方がより実態に近い値 と言えるでしょう。
子供に残すお金の平均額は?
子供に残すお金の平均額は、親の年齢や収入、子供の数などによって異なります。子供が1人しかいない場合は、子供に残すお金の平均額は高くなる傾向があります。逆に、子供が複数いる場合は、子供1人あたりに残すお金の平均額は低くなる傾向があります。
また、親の年齢も子供に残すお金の平均額に影響します。親が高齢になるほど、子供に残すお金の平均額は高くなる傾向があります。これは、高齢になるほど、自身の老後資金や医療費などの支出が増えるため、子供に残せるお金が少なくなるためと考えられます。
子供に残すお金の平均額を知るには、信頼できる調査データ を参考にすることが重要です。複数の調査データを比較することで、より正確な情報を得ることができます。
一人っ子における遺産相続の平均額は?
一人っ子の場合、遺産を相続するのは自分だけなので、遺産の平均額は高くなる傾向があります。第一生命経済研究所が2005年に行った調査によると、父親からの遺産では、一人っ子の平均額は 886万円、長子は850万円、次子以降は728万円という結果が出ています。母親からの遺産では、一人っ子の平均額は 1,300万円、長子は555万円、次子以降は575万円という結果が出ています。
この調査結果から、一人っ子は、兄弟姉妹がいる場合と比べて、より多くの遺産を相続できる可能性が高いと言えるでしょう。
親の遺産に占める現金の割合は?
親の遺産に占める現金の割合は、約40% と言われています。これは、国税庁が公表している「令和4年分における相続税の申告実績の概要」に基づくデータです。現金・預貯金は、相続財産の中でも特に重要な位置を占めています。
現金・預貯金は、すぐに使えるお金 であり、相続税の支払いや葬儀費用などに充当できるからです。また、現金・預貯金は、相続税の申告や計算を行う上で 評価が容易である というメリットもあります。不動産のように評価額が変動する資産と比べて、現金・預貯金は額面通りの価値で評価されるため、相続手続きをスムーズに進めることができます。
親の遺産がない人の割合は?
親の遺産がない、またはほとんどないという人も一定数存在します。具体的な割合は公表されていませんが、高齢化が進むにつれて、親の遺産がない人の割合は増加傾向にあると考えられます。
親の遺産がない理由は様々ですが、主な理由としては、以下の点が挙げられます。
- 親が長生きをして、老後資金を使い果たしてしまった。
- 親が高額な医療費や介護費用を負担した。
- 親が生前に多額の借金を抱えていた。
親の遺産がない場合、子供は相続によって財産を得ることができません。そのため、自身の力で生活基盤を築く必要があります。
遺産相続で揉めないために知っておくべきこと
普通の家庭で起こる相続トラブルの特徴は?
遺産相続は、時に家族間の争いに発展することがあります。いわゆる「争族」です。争族は、何も裕福な家庭に限った話ではありません。むしろ、遺産額が少ない家庭の方が、争族に発展しやすい傾向があります。
なぜなら、遺産額が少ない家庭では、1人あたりの相続額が少なくなり、相続人同士が少しでも多く遺産を手に入れようとするからです。また、遺産に占める不動産の割合が高い場合も、争族に発展しやすくなります。不動産は分割しにくいため、誰が相続するのかで揉めるケースが多いのです。
「争族」は、感情的な対立だけでなく、金銭的な損失にもつながる可能性があります。最悪の場合、裁判に発展することもあります。
遺産相続で揉める原因とは?
遺産相続で揉める原因は、大きく分けて以下の3つに分類できます。
- コミュニケーション不足
- 不公平感
- 財産への執着
コミュニケーション不足は、相続人同士が互いの考えや希望を共有していないために起こります。例えば、誰がどの財産を相続したいのか、相続税はどうやって負担するのかなどを事前に話し合っておかないと、相続が発生したときに揉める原因になります。
不公平感は、相続人同士が遺産の分割方法に納得できないために起こります。例えば、長男だからといって多くの遺産を相続できるとは限りません。法律で定められた相続分に従って遺産を分割するのが原則です。
財産への執着は、特定の財産をどうしても手に入れたいという気持ちが強すぎるために起こります。例えば、実家をどうしても相続したいという場合、他の相続人と揉める可能性があります。
これらの原因を解消するためには、相続人同士が日頃からコミュニケーションをとり、互いの考えや希望を理解しておくこと が重要です。
5000万円を相続したら相続税はいくら?
5000万円を相続した場合、相続税がかかるかどうかは、相続人の数によって異なります。相続税には基礎控除額があり、遺産総額が基礎控除額以下であれば相続税はかかりません。基礎控除額は、「3,000万円+法定相続人数×600万円」で計算されます。
例えば、相続人が1人の場合は、基礎控除額は3,600万円です。そのため、5,000万円の遺産を相続しても、相続税はかかりません。しかし、相続人が2人の場合は、基礎控除額は4,200万円です。そのため、5,000万円の遺産を相続すると、800万円に対して相続税 がかかります。
相続税の税率は、相続額が大きくなるほど高くなります。5,000万円の遺産を相続した場合、相続税の税率は 10%~20% になります。
相続税の計算は複雑なので、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
1人当たりの平均相続額は?
1人当たりの平均相続額は、約1,000万円と言われています。これは、相続財産の平均額を相続人の平均人数で割った値です。ただし、相続財産の平均額は調査によって異なるため、1人当たりの平均相続額も変動します。
また、相続財産には、不動産や現金・預貯金だけでなく、株式や投資信託などの金融資産も含まれます。金融資産の価値は変動するため、1人当たりの平均相続額もそれに応じて変化します。
相続トラブルを回避するためにできること
相続トラブルを回避するためには、生前からの準備が大切です。具体的には、以下のことを行いましょう。
- 遺言書を作成する
- 家族信託を利用する
- 相続人同士で話し合う
- 専門家に相談する
遺言書は、被相続人の意思を明確に示すことができるため、相続トラブルを予防する効果があります。家族信託は、財産の管理や承継をスムーズに行うことができる制度です。相続人同士で話し合うことで、互いの考えや希望を共有することができます。専門家に相談することで、相続に関する疑問や不安を解消することができます。
よくある質問
Q. 遺産相続の手続きは複雑ですか?
A. はい、遺産相続の手続きは複雑です。相続財産の調査、相続人の確定、遺産分割協議、相続税の申告など、様々な手続きを行う必要があります。手続きに慣れていない場合は、専門家に依頼することをおすすめします。
Q. 遺言書は必ず作成する必要がありますか?
A. いいえ、遺言書は必ず作成する必要はありません。しかし、遺言書がない場合は、法律で定められた相続分に従って遺産を分割することになります。相続トラブルを予防するためには、遺言書を作成しておくことをおすすめします。
Q. 相続税はどのように計算されますか?
A. 相続税は、相続財産の総額から基礎控除額を差し引いた金額に対して課税されます。相続税の税率は、相続額が大きくなるほど高くなります。
Q. 相続で揉めないためにはどうすればいいですか?
A. 相続で揉めないためには、相続人同士でよく話し合うことが大切です。また、遺言書を作成したり、家族信託を利用したりすることも有効です。
まとめ

この記事では、遺産相続の基礎知識について解説しました。遺産相続は、誰にとっても身近な問題です。
この記事が、少しでも皆様のお役に立てれば幸いです。
まとめ
- 普通の家庭における遺産の平均額は約3,273万円、中央値は1,600万円
- 多くの家庭では遺産総額は1,000万円~2,000万円の範囲に収まっている
- 親の遺産の大部分を占めるのは不動産と現金・預貯金
- 遺産相続における中央値は、データを小さい順に並べたときにちょうど真ん中に来る値
- 一人っ子は、兄弟姉妹がいる場合と比べて、より多くの遺産を相続できる可能性が高い
- 親の遺産に占める現金の割合は約40%
- 親の遺産がない、またはほとんどないという人も一定数存在する
- 遺産額が少ない家庭の方が、争族に発展しやすい傾向がある
- 遺産相続で揉める原因は、コミュニケーション不足、不公平感、財産への執着
- 5000万円を相続した場合、相続税がかかるかどうかは相続人の数によって異なる
- 相続トラブルを回避するためには、遺言書の作成、家族信託の利用、相続人同士の話し合い、専門家への相談が有効